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LIFE & BODY

より女性主体に進化する避妊法
~あなたの身体のプロデューサーは……~


いきなりですが、どうして人間は“時期”を選ばずにセックスするのでしょうね。
動物のように繁殖期が決まっていて、その間だけ性交するのなら避妊も必要なくて楽そうです。一生に一度も避妊をしたことがない、という人間はほとんどいないのではないでしょうか。
ところが、国によって普及している方法が違うということを最近になって知り、驚きました。私は避妊=コンドームだと思っていたからです。

身近すぎるコンドームについて考えてみる

避妊

実際に、日本人はどんな方法で避妊を行っているか調査したデータがあります。

第1位 : コンドーム 82.0%
第2位 : 性交中絶法(腟外射精) 19.5%
第3位 : オギノ式 7.3%
第4位 : ピル(経口避妊薬) 4.2%
第5位 : IUD (子宮内避妊具) 0.4%
(複数回答可。出典:国際協力NGOジョイセフ

日本のラブホテルには必ずコンドームが二つ、枕元に置いてありますよね。2回する人もいるし、破れてしまったときの備えという意味もあるそうです。また、コンビニでもティッシュやトイレットペーパーの棚に置いてあるので、お菓子や雑誌といっしょに買えば恥ずかしい思いをせずに手に入ります。
日本のコンドームは避妊失敗率わずか2%と優秀で、財務省の貿易統計によると年々輸出額も増加。世界のコンドームの20~30%は日本製品で、生産量・輸出量・生産品質ともに世界第1位、2018年には貿易高42.0億円分のコンドームを北米やアジアに輸出しています。
コンドームの良い点は、

①いつでもどこでも安価で手に入れやすい
②避妊だけでなく性感染症の予防ができる
③セックスの経験のない子どもにも、緊急用として持たせることができる
④理想的な使用法をすれば避妊効果が高い


とたくさんあります。
性感染症を防げる避妊具はコンドームだけですし、まったく性体験のない人が急に必要となったときに役立つ避妊方法もコンドームだけです。
唯一、問題点をあげるとしたら④です。この、「理想的な使用法」というのがネックなのです。これはあくまでメーカーが推奨する使用法を完璧に守った場合だからです。
現実には次のような使い方が危険です。

①挿入の最初からつけず、射精の前につける
②まちがえて裏返しにつける
③つけてはいたが、途中で外れてしまった


こういった小さな失敗がコンドームにはつきもので、男性の中にはこういうことがあっても、「今まで大丈夫だったから」と過信している人もいます。失敗したという意識がないので、後で妊娠を告げられても「俺じゃないんじゃない?」と思ったりします。
一般的な使用ではコンドームの避妊失敗率は18%と言われています。1年間使用したとして6組に1組のカップルが、「つけたのにできちゃった!」という修羅場になるということです。単純に避妊成功率だけでみると、コンドームはいちばん優れた避妊法とは言えないのです。
避妊に失敗したかも知れないと思うと、女性は大きなストレスを背負います。

「生理が来ない。妊娠したのでは?」
「彼氏は何て言うだろう。このことで関係が悪くなるかも知れない」
「妊娠検査薬って何週間後から判定できるんだっけ?」
「産婦人科に行きたいけど、お腹の大きな妊婦さんたちの間で順番を待つのがつらい」
「中絶するとなったら、お金はどれぐらい必要なんだろう?」などなど……。

一度もこのような心配をしたことのない女性は、ほとんどいないのではないでしょうか。急にセックスの機会が訪れたときにコンドームは役に立ちますが、継続して交際するようになったら、もっと確実な避妊法と併用したほうがよいでしょう。

避妊成功率をかぎりなく100%に近づけるには

ピル

そこで強い味方になるのが低用量ピルです。
低用量ピルには、避妊目的のOC(低用量経口避妊薬)のほかに、月経困難症・生理不順・子宮内膜症の痛みの緩和などに利用されるLEP(低用量エストロゲン-プロゲスチン)があります。
LEPは治療目的なので健康保険が使えますが、OCは実費です。月額およそ2000円~3000円ぐらいかかります。しかし、毎日1錠のむことを忘れなければ避妊成功率は99%以上。現実には、飲み忘れがあると9%は失敗するそうですが、排卵日前後はコンドームを併用することで成功率100%にかぎりなく近づけることができます。

低用量ピル+コンドーム……ここまで対策を立てておけば、安心してセックスが楽しめるのではないでしょうか。予定していない妊娠に対する不安から解放されることは、精神的なメリットも大きいですし、ピルの処方箋をもらうために通院して、かかりつけの婦人科をつくる第一歩にもなります。妊娠の計画や女性特有のがん、更年期症状など、いろいろな相談のできる先生を見つけておくことは大切です。

しかし、現実にどれぐらいの人がピルを利用しているかというと、全体のわずか2%にすぎません。子宮内に小さな避妊具を入れるIUDも2%。残りの96%はコンドームなのです。
この避妊法チョイスを世界と比較してみると、日本人がいかにコンドームに頼っているかがわかります。

グラフ

理由としては、衛生用ゴムの生産が盛んで高品質だということ。そして、「“授かり”の確率を上げるために② ~人知れず戦ったふたりの12年、その後に~」でも少し触れましたが、こと生殖や女性特有の健康に関して、「なんでも自然が一番という日本特有の思考」にもあるかも知れません。ホルモンを服用することや、子宮内に器具を留置することに抵抗を感じる人が多いのでしょう。

IUDまたはIUSをコンドームと併用することもお薦めできます。年間の避妊失敗率は0.2~0.8%と低用量ピル並みの優秀さですが、医師に子宮に入れてもらうだけなので、ピルを飲み忘れる人はIUDのほうが向いているかも知れません。
IUDはポリエチレンのスティックに銅を巻きつけるなどした小さな器具で、さらに女性ホルモンを放出する機能を持たせたものをIUSと呼びます。
どちらも一度病院で入れてもらえば5年間程度、効果が持続する便利なものです。しかし、子宮内に異物を入れるため、日本では出産経験のない女性には入れないという考え方が一般的のようです。
費用はIUDで15,000~30,000円、IUSで30,000~70,000円と高額ですが、5年間もつことを考えると、70,000円かかったとしても月にならすと1,166円となり、低用量ピルよりも安いことになります。

避妊は女性が自分の身体を守る方法

身体を守る方法

さて、上のグラフには、その私たちには聞きなれない注射やインプラントが出てきました。どちらも日本では認可されていないものです。これらの先進的な避妊法は、一部の先進国でのみ利用されているわけではありません。
ミャンマーやタイ、インドネシアではピルや注射、ベトナムではIUD、ネパールでは注射が多く利用されているため、日本に移住してきた外国人女性が困っているという事態も起きています。海外からの労働力を受け入れるためには、“外国人にとっても暮らしやすい日本”でなければならず、避妊と女性の健康事情も今後大きく変わっていくかも知れませんね。

コンドームとそれ以外の避妊法のちがいをひとことで言うと、メリットは性感染症を予防できること。たとえ低用量ピルやIUD、IUSを使っていても、パートナーが変わるときはコンドームをつけるのが現代的なセックスのマナーです。交際が継続して、おたがいにほかには性的パートナーがいないことがわかるまではコンドームが必要です。
デメリットもあります。それは避妊の決定権が100%男性側にあるという点です。性暴力に遭った場合はもちろん、相手は継続して交際している男性であっても、何らかの理由でコンドームを拒否され一方的に射精されてしまった……というケースが多々あるのです。

そんなときのためにアフターピル(緊急避妊薬)というものがあります。
性行為後72時間以内に服用することが必要で、妊娠予防率は85%程度ですが、早ければ早いほど効果があります。病院で医師に処方してもらっている間にも、手おくれになる確率はどんどん高くなっていきます。
仕事や学校が休めない、病院の休診日だった、手元にお金がなくて病院に行けなかった(日本で認可されているノルレボ錠は1錠15,000円前後。2019年3月に認可されたジェネリックでも初診料と合わせて6,500~10,000円ぐらいかかる)……等、アフターピルにはなかなか手が届きにくいという現状があります。
しかし、これも日本特有の状況だそうで、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリアなど80カ国以上の国ではアフターピルを処方箋なしで買うことができ、日本より安価なばかりか、無料で提供している国もあるのです。

今、日本でもようやくアフターピルのオンライン診療化に向けて議論が活発になってきました。今回の記事は、NPO法人ピルコンの染矢明日香理事長、#なんでないのプロジェクトの福田和子代表が医療従事者の皆さんとともに開催している“緊急避妊薬に関する院内勉強会”で学んだことと自分の感想からまとめました。
日本の避妊事情のこれからは、どんどん女性主体になっていくのだと思うとうれしいです。
私の青春は今から40年ほど前で、そのころの女子は、「ちゃんと避妊してって彼にお願いしたのに……」とか「愛しているから(避妊しなくても)いいじゃないか、と言われた」とか、そんなことに悩んでいたのです。
でも、よく考えたら自分の体の責任者は自分なんですよね。自分しかいないんですよね。
そして前に書きましたが、私たち女性はお母さんの胎内にいるときに、すでに一生分の卵子をミクロの体のなかに抱えていたのです。避妊は自分自身の体のケアでもあり、未知の生命に対するケアでもあるのだと思います。

―より良い産みどきのために、避妊をする。
―より楽しいセックスのために避妊をする。
読者の皆さんが安心して性を楽しめるように、パートナーと深く理解し合えますように、と心からお祈りしています。