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LIFE & BODY

ベストマッチな結婚を求めて
~遺伝子レベルで出会いたい~


結婚

先日、同じ日に二人の女性の結婚(入籍)の知らせが舞いこんだことがありました。奇しくも二人とも40代の女性です。どちらの女性も、仕事熱心な姿をいつも見ていたので、心からよかったなあと思いました。
仕事でよく会う女性に話すと、
「もしかしたら40代って結婚適齢期なんじゃないですかね。社会に出て、仕事がしっかりできるようになって、貯金もして……と考えたら、40代になるような気がします」
と、言っていました。たしかに、日本人の初婚年齢は上がり続けているのです。
厚生労働省発表の資料をもとに、女性の平均初婚年齢がどのように変わっているか調べてみました。初婚・再婚を含めての数字を30年前とくらべてみます。

昭和50年 27.7歳 25.1歳
平成27年 33.0歳 31.0歳

男女とも確実に初婚年齢は上がっています。この先も急激にこの年齢が下がることはないでしょう。慎重に相手を選んだ結果、30代40代での初婚になるというのは、悪いことではないと思います。
しかし、選ぶにはそれだけ多くの出会いが必要です。結婚までの年数が長くなったぶん、出会いも多くなればいいのですが、そういうわけでもないようです。同棲中の彼氏との結婚を考えはじめた、というAさん(28歳・会社員)は言います。
「神田さんの若いころのような、偶然にいつも同じバスに乗り合わせてみたいなの、今はないんですよ。会社や仕事で知り合って、というのもむずかしいです」
女性の就職は“腰掛け”と呼ばれ、結婚相手を探したら“寿退職”するもの、と決まっていた時代とは、職業や職場に対する取り組み方も変わりました。また、昔は少しでも親しい異性がいれば、親や近所の人、職場の上司までが「いつ結婚するんだ」と急かすのです。当時は、そんな慣習に疑問を抱く人もいませんでした。
親しい異性がいない人には、お見合い話が持ちこまれます。お見合い結婚ということば自体、今はほとんど聞かなくなりました。
結婚を望む現代の男女は、どこに出会いを求めたらいいのでしょうか? いつまでも少子化にブレーキがかからない一因は、出会いの少なさにあるのかも知れません。

会えないはずの人と出会うためのシステム

婚活

「最近、婚活をはじめました」というBさん(26歳・会社員)に話をきいてみました。婚活サイトに登録したのかと思っていたのですが、話を聞いてみるとそうではありませんでした。
「いわゆるマッチングアプリがきっかけで、8名の人と会ってみたんです」
と聞き、出会い系のようなものではないかと心配になりましたが、マッチングアプリはAIが条件に合った相手をフィルタリングし、そこから気になる人を選ぶというシステム。
立教大学と株式会社ネオマーケティングが2018年7月に行った調査では、20~30代の約5人に1人が利用しているそうで、Bさんも3つのアプリを利用しています。
これらのアプリで、ワンナイトや不倫の相手探しではない、将来を考えている人と出会うことはできるのでしょうか。
「アプリにもよりますが、30代で利用している方はほとんどが結婚を意識していてのきっかけ作りで利用しているようでした。20代の方は飲み友達探しという方が多かったです」
お互いに相手に好感度を示したらマッチング成立、二人でお店を選んで食事する、という展開になります。Bさんは、さりげなく「この間、友達の結婚式に行って……」などの会話を振って、相手が結婚にどのくらい関心を寄せているかを探ってみることもあるそうです。
                                                                      
アメリカで2005~2012年に結婚した19,000人を対象に行われた調査(米科学アカデミー紀要Proceedings of the National Academy of Sciences、PNASに掲載された米研究チームの論文による)によれば、「1/3以上のカップルがオンラインで出会っている」という結果が出ています。オンラインの出会いとは、SNSとマッチングアプリによるものです。
私たちが日常生活のなかで出会える人の数はどれぐらいなのでしょうか? 実は非常に限られていて、顔見知り以上の交流を持つ相手は一生に3000人くらいだと言われています。その中に自分と年齢が合う未婚の異性がどれぐらいいるかと考えると……意外に選べないんだな、と思います。
マッチングアプリが普及している理由はそれだと思います。日常生活だけでは出会えない相手もふくめた中から一人を選んだと思うと、自分の選択に対する満足度も高くなります。
Bさんのように複数のアプリに登録すれば、さらに多くの異性の中から相手を探すことが可能になるでしょう。昔のお見合いのお仲人さんの中には、いつも複数のお見合い写真と釣書(お見合い用の身上書)をあずかっていて、次から次へと見せにくるような人がいました。
お仲人さんはAIに代わり、写真と釣書はデータに変わっていくのでしょうか。

私たちの行動は遺伝子に指図されている

食事

アプリでおたがいに好感を持った相手といよいよ食事。AIが選んだ相手と話し、おたがいを知り合うのはなんだか楽しそうです。チェックするポイントはたくさんあると思いますが……。
Bさんが気にして見ているのは、食事をしているときのマナーや、会話中の視線。そして店員さんへの接し方。結婚の可能性もと考えると、目の前の女性だけじゃなく、周囲の人にも礼儀や気配りを持っている男性がいいですよね。
でも、いざお店を出るときに、
「お会計をサッと支払ってくれたり、7割ぐらい出してくれたりすると好印象なんです。そんなことを思うの、図々しいですよね?」
と言うBさん。「結局、経済力かよ」という男性の声が聞こえてきそうですが、実はこれ、人間の自然な反応なのです。
動物行動学・人間比較行動学の小林朋道教授の『利己的遺伝子から見た人間 愉快な進化論の授業』によれば、私たち人間の個体はみな、常に「幸福になりたい、幸せを感じていたい」と希望しています。そして、どうすれば幸せを感じることができるかは、脳が感情を介して教えてくれているのだそうです。

遺伝子は、幸せを感じさせ、それを求めて行動させることによって、自分(遺伝子)が増えやすいように個体(乗り物)を操っているのである

個体とはBさんのことです。つまり、Bさんの遺伝子は自分が増殖できるように、Bさんの脳に「こうしたらいいよ」とささやいているわけです。
Bさんが、お金を払ってくれる余裕のある男性と結婚してくれれば、遺伝子にとっては好都合。子どもを産んでもらえば、自分と同じ型の遺伝子をたくさん増殖できるからです。

魅力的な異性(最近の研究は、出産や子育てに優れていることの指標になる形態や振る舞いをする異性に対して、脳は、魅力を感じることを明らかにしている)と結ばれることも、遺伝子の増殖に有利だ。

女性が「男性にデートのお金を出してもらってうれしい」と感じるのは、単に一回分の食費が浮いたからではなく、将来子どもが生まれ、自分とその男性との遺伝子がよりよい条件のもとで増えていくことができる、と察知しているからなのですね。
つまり、Bさんが図々しいのではなく、遺伝子がちゃっかりしているということなのです。そしてBさんに限らず、誰の遺伝子も自分を増やすことに必死で、計画的なのです。しかし、
「Bさんは経済力だけで、その男と結婚するだろうか?」
いいえ、遺伝子のたくらみはまだまだあるのです。

ついルックスで選んでしまうのは遺伝子のせい

容姿

Bさんが気にしていることが、もう一つありました。
「どれだけ話が盛り上がっていても、趣味が一致していても、容姿を重視してしまうんです。そして、食事デートを終え、必ず最後に考えてしまうのが『さっきの男性とセックスができるだろうか』ということなんです」
Bさんは会ってすぐにセックスしたいわけではないのに、最初のデートからセックスできるかと考えてしまうことを気にしていました。
「たった2~3時間の食事しかともにしていないのに、『無理だ』と感じたら、次の提案を頂いてもうやむやにしてしまうことがわかりました」
セックスしたいかどうか、を深く付き合う前に決めてしまったり、容姿だけで決めてしまったりするのは薄情なことでしょうか? 相手の内面を見ようとしていないことになるのでしょうか?
生物学者でテレビでもおなじみの池田清彦博士の著書『オスは生きているムダなのか』にこんな一節があります。

かっこいいオスを選んだメスの子どもにはそのオスの遺伝子が伝わるため、かっこいい子どもができる。(中略)

これはあらゆる生き物に起こることのようです。食事をしただけで「この人とできる?」と吟味してしまうのは、実はBさんの意志ではなく、「この人と子孫を作れる? どう?」という遺伝子のささやきなのかも知れません。いくら経済状態がよくて、趣味の話が合ったとしても、それだけでは遺伝子は満足するわけにいかないのです。
探しているのは結婚相手でも、一瞬も離れがたいと感じるような恋の時間を経てから結婚したい、とBさんは願っています。
人間のセックスは演劇に似ている、とよく思います。

あるときは荒々しいほどの男と従う女の役を……
またあるときは女王のように君臨する女と騎士のごとく仕える男の役を……
二羽の小鳥のように慈しみ合う二人の役を……

目には見えないセックスの台本は無数にあり、相手との組み合わせによってテーマもストーリーも変わってきます。それを演じるのが恋のよろこびであり、セックスの一体感なんじゃないかと思うのです。
劇の相手役を決定するのは人間の直感です。この人となら感動する劇を演じることができる、と直感して賭けるのです。
「しばらく付き合ううちに無理ではなくなっていくのかも、と思いますが、そうそう変化することはないだろうな、とも思うし……」
と、ふと迷いを感じているBさんに、そこはご自身の直感を信じていいのでは、とお答えしました。

AIには判断できないこと

判断

最初に登場した同棲中のAさんにも、「彼とセックスしたい」という明確な気持ちが同棲前にあったかを質問してみました。ありましたよ、と答えてくれたAさんに、その気持ちの正体は何なのでしょうか、「気持ちよくなりたい」のでしょうか、「子どもがほしい」なのでしょうか、とかなり立ち入ったことを聞きました。
「相手がどんなふうに変わるのか、その瞬間を見てみたいという気持ちです。ウッとなった(射精)あと、素にもどって親しい表情になるでしょう? そこが見たいかどうか。たいていの男の人の(そんな変化)は気持ち悪いし。でもこの人なら見たいなって感じ。それによって関係性が決まるような……」
このAさんのことばは、人間のセックスの生殖以外の重要な面を言いあらわしていると思います。
この相手と経済的に不自由のない生活ができるか、をAIはかなり正確に割り出すことができるでしょう。しかし、将来この人とのセックスに夢中になれるか、相手の激しい変化を見たいと思えるかどうか、はデータ計算だけでジャッジできないような気がします。
もしかしたら、このジャッジにも遺伝子のささやきが関わっているのでしょうか。さらに研究が進むのを待たねばなりませんが、AIと遺伝子が情報をやり取りするような現代のパートナー選びに私も興味津々なのです。