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LOVE & SEX

彼の気持ちがわからない?!
~男女でこんなに違う! 脳が恋人を選ぶ条件~


パートナー

においが恋愛をつかさどる!?」で、体臭によって相手を好きになるか嫌いになるかが決まる、というお話をしました。
嗅覚による無意識の選択は男女問わずに起こります。
パートナーと争わなくてもいいように、いつまでも長くいっしょにいられるように、人間は五感で相手を選んでいるのです。
このふるい分けに使われる情報、香り・匂いは男女に共通していますが、実は男性だけが反応する情報、女性だけが反応する情報もあります。
男女の恋愛について研究を重ねているラトガース大学の人類学者、ヘレン・フィッシャー博士*(注1)は、恋人たちの脳の反応から「女と男が何を基準に相手を選んでいるのか」を調べました。
その結果、脳の共通した領域が活動するだけでなく、男性と女性でまったくちがう部位も反応していることがわかったのです。
特に男性は「ルックス」を重視する人が非常に多く、アンケートを取ってみると、匂いよりも上位にランクインします。
これだけ聞くと、「えっ、結局顔なの!?」と毒づきたくもなるのですが、詳しく分析してみると、どうやら顔の好みとか良し悪しということではないことがわかってきました。

*注1 アメリカ合衆国の人類学者、ラトガース大学研究員。恋愛中に脳で分泌される化学物質の分析など、MRIなどの技術を駆使して恋愛科学を研究。米国人類学協会賞栄誉賞。

彼はなぜヌード写真だけでオナニーできるのか?

浮気

20代~30代の未婚女性と、自分以外の女性に対する彼氏の行動について、「どこからが浮気か」という座談会をしたことがあります。
この基準が実に人それぞれで、許せる・許せないのちがいだけではなく、「えっ、それも浮気のうちに入れちゃうの?!」みたいな項目がいろいろ出てきて、話は盛り上がりました。
同じテーマの調査結果がネット上にもありますが*(注2)、男性の調査結果を見ると、「キスしたら浮気なのか」「手をつないだら浮気だ」「いやいや身体の関係を持って初めて浮気でしょ」……というふうに行為の深刻度だけでシンプルに回答しています。
ところが女性が「それは浮気でしょ!」と思うポイントはそれだけではありませんでした。

座談会で「エロ雑誌を見るのは浮気だ」と発言した20代の女性がいました。
彼氏の部屋に泊まったときに、ベッド下の引き出しからエロ雑誌が出てきて、
「私以外の女性の身体のほうが好きなの? もう見るのやめてね!」
と怒ったのに、やめるどころかその後もこっそり買って見ていることがわかり……
「ねえ、こんなのでオナニーしてるの? これって浮気と一緒だよ?!」
「はあ? 何言ってんの、浮気したくないからエロ雑誌で我慢してるんじゃん?」
「我慢って……じゃあ、他の女の子とエッチしたいってこと? 私とじゃダメってことなんだね!」
と、喧嘩になってしまいました。
彼女にしてみれば、自分以外の女性の身体を見て勃起したり、射精したりするのは裏切りでしかありません。
男性にとっては「たかが映像。生身の女性ではない」という感覚なのでしょうが、女性は男性のヌード写真だけでオナニーするということはあまりないので、納得できません。
そこに何かのストーリーや言葉があって想像力を刺激されないかぎり、女性は視覚だけではオーガズムまではいかなさそうな気がします。
「視覚で刺激を受けると勃起してしまうのは、ただの反射行動。愛情や裏切りということとは関係ないよ」というのが男性の言い分です。

実は男性が女性を好きになる「ルックス」というのは顔よりもプロポーション、それも「ウエストとヒップの比率=腰のくびれ」であることが知られています。
だから男性週刊誌には水着姿の女性のグラビアが必須なのです。
子供時代、男の子も女の子もウエストとヒップにあまり差はありません。
しかし、女性が思春期に入ると卵巣から女性ホルモン・エストロゲンが分泌され、独特の筋肉と脂肪の付き方になっていきます。
男性がもっとも惹かれるくびれを数字にすると「ウエスト7:ヒップ10」となります。
ウエスト60センチの女性ならヒップ86センチぐらい。
女どうしから見たら太めのウエスト67センチの女性であっても、ヒップが96センチあれば男性は「セクシーだ」と感じるということになります。
これはこれで「えっ、結局身体かよ! エッチかよ!」とまたまた毒づきたくなるのですが、実はこの数値には深い意味があります。
ウエスト:ヒップ=7:10は、病気にかかりにくいプロポーションなのです。
ウエストとヒップの差が小さいと、糖尿病・高血圧・心臓病・ガン・循環器系の疾病にかかりやすくなることが知られています。
つまり男性は無意識のうちに健康で長く寄り添ってくれそうな女性を「何となく好き」になるようにプログラムされているのです。
ほかの哺乳類に比べて子を産み育てることが容易ではない人間の本能なのかも知れませんね。

*注2 CanCam.jp【彼氏の浮気】どこからが浮気?許す?危険度チェックなど…経験者に訊いた!(2017年11月24日更新) https://cancam.jp/archives/504868

彼はなぜ大事なことを忘れてしまうのか?

恋人の条件

いっぽう、男性にはなくて女性にだけ見られる「恋人の条件」もあります。
同じ座談会で、「テーマパークや遊園地などに行く」を浮気の範囲に入れた女性がいました。
ネット上の調査でも、「旅行をする」は男女ともに浮気としていますが、女性は〇○ランドや○○ワールドも「私以外と行かないで!」と思っていることがわかります。
これ、何となくわかるなあ、とみんなうなずいていました。
日帰りか泊まりか、という問題ではありません。
ふと思いついてランチに行く、というのとはちがいます。
わざわざ約束をして、それを記憶していて守ってくれる……この行動、女性にとってはとても重要なことなのです。

フィッシャー博士の恋と脳の研究によれば、男性の脳でだけ活発に活動していたのは「視覚」に関する領域ですが、女性の脳でだけ活性化していたのは、何と「記憶」と関係している場所でした。
人間の女性が一生に妊娠・出産できる回数はほかの動物にくらべて少ないですし、子が一人立ちするまでに大変な時間がかかります。
その長い育児のあいだ、最初にセックスしたころに約束したことを守れる男かどうか、という観点で恋人を選ぶのは、とても自然で重要なことなのです。
博士によると、「相手がいい夫になってくれるか、見た目だけでは判断できません。だから女性にとって記憶が頼りなのです。女性は、相手が何を約束し、そしてそれを果たしてくれたかということを、とても気にします。また女同士でもそのことを頻繁に話し合い、そうすることで相手の行動を確認し、判断材料としているのです」と、結論づけています。
女子会的な場で、彼氏とどこに行った、何をしてくれたという話題が尽きませんが、これはただの自慢話ではないようです。
自分にとって約束を守ってくれる男をパートナーにしているかどうか、をほかの女性の話も判断材料にしながら選択しているという見方ができそうです。

女性が「約束」や「記憶」にこだわりを持つのは、実は脳の構造的な男女差によるものだったのですね。
大脳のウェルニッケ野*(注3)という領域は知覚性言語中枢とも呼ばれ、他人の言語を理解する働きをしているのですが、この部位の細胞密度は女性のほうが男性より12%も高いのです。
また、記憶を司る海馬*(注4)という部位も女性のほうが男性より大きいことがわかっています。
男女で口喧嘩をすると「女には口では敵わない」と言われるのも、女性から見ると「どうして忘れるの? 私との約束は大切じゃないの?」と驚くほど彼氏が忘れっぽいのも、こうした性差が影響しています。

「何となく、好き」「いつの間にか好きになっている」とき、人は恋を意識すると思いますが、そのとき脳内では子孫を残すにふさわしい相手を選ぶためのスクリーニングテストが静かに行われているわけです。
男も女も今日までの進化を遂げるあいだに、テストの条件を作っていったのでしょう。
異性でちがうのは性器や身体つきだけではないのです。
脳の構造のちがいによって、「なんでわかってくれない?」と悩むこともあり、お互いに思いつかないことを補い合えるパートナーでもあり……だから恋愛は人生を豊かにしてくれるのかも知れませんね。

注3 ウェルニッケ野(Wernicke's area)は大脳の一部で左半球にあり、上側頭回の後部に位置する。19世紀にドイツの神経科学者・外科医のカール・ウェルニッケが、ここを損傷すると失語症を起こすことを発見した。
注4 海馬(hippocampus)は、大脳辺縁系の一部である海馬体の一部で、短期記憶を司っている。アルツハイマー病における最初の病変部位としても知られており、心理的ストレスを長期間受け続けるとコルチゾールの分泌により海馬の神経細胞が破壊され、心的外傷後ストレス障害(PTSD)・うつ病の原因になる。