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LIFE & BODY

「におい」が恋愛をつかさどる!?
~嗅覚と愛情のデリケートな関係~


知らず知らず誰かを好きになる理由

恋人

突然ですが、皆さんは今好きな異性がいますか?
人は、そして動物たちは、どうやって自分にとってのオンリーワンを決めているのでしょうか?
動物とはちがい人間は言葉を話しますから、異性から言われた言葉に惹かれたり、相手と経験したことを言葉で記憶する点は動物とちがっています。
「あんなことも、こんなこともしてくれたなあ~。あの人はたいせつな存在だな~」という、経験と言葉の蓄積による「好き」です。
これは人間特有の複雑な「好きになるプロセス」だと言えるでしょう。
しかし、それ以外の情報―相手の見た目とか、音声とか―を五感で受け取って、好きになったり嫌いになったりする点は、基本的に人間も動物と同じです。
好きになれる相手かどうかを決定する行動は、ほとんど瞬間的に無意識に行なわれているので、
「気がついたら好きになっていた」
というようなことが起こります。
そのなかで最近注目されているのが「におい、嗅覚」によるものです。
人から体臭を受け取った場合、その人を好きになるか嫌いになるかを左右してしまうことがわかってきたからです。
かつて、10年間もあこがれていた人と二人きりでお酒を飲んだことがありました。
結婚されている方だったので、お付き合いなどはできませんが、密かに好きだったのでうれしい時間でした。
ところが、その人がスーツの上着を脱いだとたん、何とも言えない「胸がキュンとする香り」が漂ってきて、思わず「いいにおい」と口走ってしまったのです!
すると、「俺、ちょっとワキガなんだよね」と笑いながら言われて、その笑顔も爽やかで素敵でした。
「香水ではなくてこの人の身体そのものの香りだったんだ…とんでもなく性的なことを口走ってしまった…」と、ドキドキが止まらなくなったことを覚えています。
汗のにおいであっても、腋臭であっても、ずっと嗅いでいたくなる強い印象を感じるのが遺伝子的に相性の良い相手の香りだということでしょう。

パートナーのにおいが受け入れられない

におい

においは文字に書いて残しておくことも、写真に撮ってスマホに入れておくこともできません。
でもちゃんと記憶に残っていて、街中で好きな人と似たにおいを漂わせている人とすれ違うと、「ああ、このにおいは…」と感覚がよみがえります。
それとは逆に、仲よくしたい相手なのににおいが妨げになってその気になれない、ということもあるのです。
OVO広報部のTwitterでは相談を募集していますが、「彼氏のにおいが好きになれません」というお悩みがいくつか寄せられたのです。
「あなたのにおいが好きになれない」なんて、言われる側からしたらこの上ないショックですから、彼氏本人には言えませんよね。
でも、友達に相談したら、「え、そんなことで彼氏を嫌いになるの?」と言われそうで、ちょっと相談しづらいでしょう。
とてもデリケートでむずかしい悩みです。
恋に落ちたときには好ましい点がたくさんあったのに、だんだん一緒に過ごす時間が長くなると、相手のにおいに落ち着かなくなる自分に気づく。
セックスどころかキスをしていてもにおいが気になり、せっかくの雰囲気にひたることができなくなる。
……こうなると、「この人とは別れたほうがいいのだろうか?」と考えることさえあります。
パートナーのにおいが受け入れられなくなることは、なかなか理解してもらえないつらい悩みなのです。

変えられるにおい、変えられないにおい

フェロモン

皆さんは自分の好きな人の香りをパッと思い浮かべることができますか?
また、今はつき合っていないのに、「あの人はよいにおいだった」と記憶に残っている人はいませんか?
人が身体から発散するにおいには、変えられるものと変えられないものがあります。
衣服の柔軟剤や化粧品、香水などはもちろん変えられるにおいです。
彼氏は体臭がきついと思っていたが、生活習慣が原因だったという話はよく聞きます。

「ずぼらな人で、風通しのよくない室内に干したシャツを生乾きのまま着ていた。私が洗濯してきちんと乾燥するようになったらにおわなくなった」
「結婚して、野菜を食べるようになったら体臭が軽減した」

これらはみな後天的に持ったにおいで、変えることができるものです。
問題は生まれつき持っている「その人特有のにおい」の場合です。
これは遺伝子の型によって決まり、一生その型が変わることはありません。
2015年に放映されたテレビドラマ『恋仲』(本田翼・福士蒼汰主演)に、「人は自分と異なるHLA遺伝子を持った異性に強く惹かれる」というセリフが出てきたのを覚えている人も多いでしょう。
HLA遺伝子の型は数万通りありますが、人はより免疫力の強い子孫を残したい本能から、無意識に自分と違う型の遺伝子を求めるそうです。
父親の加齢臭を実の娘が嫌うのは、この遺伝子の型が近すぎるからだと言われていますね。
逆に相手を「体臭ごと好き」というのはどんな感じなのか、ネットでいろいろな人の意見を読みあさってみました。
わかりやすいなと思ったものには、こんな例がありました。

「彼の脱いだシャツや使ったタオル。男くさい、男くさい、と悪口を言いながら、いつまでもクンクンしてしまう」
「ダブルベッドに寝ていて、後から夫が入って来たとき。ふわっと香るにおいに、すごく落ち着きます」

逆に、これが好きになれないにおいだったら、洗濯ものを洗濯機に入れるのも、同じベッドに寝ることも苦痛になるかも知れません。
しかも、相手には何の非もないのですから、改善しようがないのです。
そう考えると、同棲や結婚など一生を共にする相手を決めるときには、相手のにおいを好きかどうかも考慮することは正しい態度かも知れませんね。
においに関する実験の話をしますと、雌マウスは交尾した雄マウスのにおいやフェロモンを記憶しているのだそうです。
この雌だけを別のケージに入れ、交尾したことのない雄マウスのにおいやフェロモンを嗅がせると、妊娠が維持できなくことが起こるそうです(ブルース効果)。
なんだかマウスがかわいそうになりますね。
マウスと言えども、人間同士の愛情に近い感覚を持っているのではないかと想像してしまいます。

*参考サイト HLA研究所「HLAとは」 http://hla.or.jp/about/hla/
*参考図書 森憲作「脳のなかの匂い地図」(PHPサイエンス・ワールド新書)

見過ごしてはいけない!もしかしたら病気かも…?

病気

ネット上で見るかぎり、「においが許容できない相手とは長続きしない。無理に付き合わないで別れたほうがいい」と考える人は少なくありませんでした。
前述のように、においの好悪が遺伝子の型の相性であるならば、あえて「あなたのにおいが好きになれない」と言う必要もないでしょう。
しかし、においがもたらす情報は遺伝子の相性だけではありません。
病気が原因で身体のにおいが変化することがあるのです。

例えば糖尿病では、甘いにおい(進行すると甘酸っぱいにおいに)…
肝機能障害では、カビやドブのようなにおい…
貧血や腎機能障害では、アンモニア臭…
胃の障害では、卵の腐ったようなにおい、酸っぱいにおい…
痛風は、古くなったビールのにおい…
トリメチルアミン尿症(魚臭症候群)は、体臭も口臭もなまぐさくなる…

体臭の異変を伝えてくれるのは身近な彼女や奥さんしかいないような気がします。
気づいていながら伝えなかったことで、のちのちに大きな後悔を招くことになることもあります。
相手に愛情を感じているのなら、思いきって話し合ってみることも大切だと私は思います。
においは個人の身体が持っている「情報」ですが、愛しあう人間どうしの場合は、二人を取り巻く「環境」でもあるのです。
時にはお互いのにおいについて考えてみることも、愛情を深めていくのではないでしょうか。

*参考図書 外崎肇一「ニオイを嗅げば病気がわかる」(講談社+α新書)