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~男性にありがち?女性の身体に関する誤解と思いこみ~


思いやりのつもりで言った言葉が女性の怒りを誘う?

女性の怒り

―女性の身体はデリケート。
それは男性もわかっていて、彼女や奥さん、同僚などをいたわらなくては、と日頃から気にかけてくれている男性も多いことでしょう。
しかしそう考えて掛けた言葉が、実はとんでもない思いこみや勘違いによるもので、逆に女性を深く傷つけてしまった……ということがしばしば起こります。
今回はそんな『女性の身体に関する男性の誤解と思いこみ』についてお話したいと思います。

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女性の身体は構造もしくみも複雑です。
そもそも女性自身、「私の卵巣はここ」「子宮はここらへん」と、皮膚の上から指し示せる人はほとんどいないでしょう。
生理や出産などの重要なイベントを司っている部位は、外から見えませんし、女性ホルモンという目には見えないものが女性の体調を大きく変化させます。
外性器ですら、自分の目で見て形状を知っている人は多くありません。また、女性の身体は外見も機能も個人差が大きく、何が標準かと決めることがむずかしいものです。

そんな女性に対し、男性から発せられる言葉は…

「やりたい気持ちが強くなるのって、排卵前後なんでしょ?」
「女の人ってここが感じるんだよね?」
「生理中なの?避妊しなくていいじゃん、やろうよ」
「潮ってオシッコなんだよ」

女性からしてみれば「チョット待って!」と言いたくなるようなものがたくさん……。

女性の身体については、まだ解明されていないことや、新しい研究成果もたくさんあり、ネットやアダルトビデオ、人からの口づての情報が正しいとは限りません。

女性と男性の身体はあまりにも違います。
「俺は知っている」ということがえらいのではなく、「こうしなさい」と専門家ぶってアドバイスすることがえらいのでもありません。
一般的に『女性はこうだ』と決めつけることはせず、「なぜ彼女は苦しんでいるんだろう、悩んでいるんだろう」と 『相手を思いやる習慣』を男性側が常に持ち続けてくれると、女性の生きやすさやQOL(Quality of life(クオリティ オブ ライフ)「生活の質」)は大きく変わってくると思います。

「ピルを飲んでいるということは、
中に出してほしいってこと?」

ピル

『ピル=避妊=ゴムをつけずにいつでもセックスができる』という連想をお持ちの男性は未だに多いことでしょう。
実は男性に限らず、女の子のお子さんを持つお母さんも同じような意識の方が少なくないようです。

私自身も、わが子が自ら産婦人科へ行き、処方された低用量ピルを飲んでいる姿を見て、複雑な気持ちになりました。
「コンドームは避妊のためだけじゃなく、性病予防のためにも必要だよ」というようなことを思わず口にしたところ、
「ママ、私は自分の体調のために飲んでいるのよ!」
と言われ、はじめて子供がPMS(月経前症候群)や生理痛に苦しんで病院に行っていたのだということを知りました。
これが交際している男性の場合だと、「やっぱり中に出してほしいんだね」という早とちりにつながるわけですね。

低用量ピルには『卵胞ホルモン』と『黄体ホルモン』が配合されていて、継続して服用することで月経周期が規則的になっていきます。
男性には想像もつかないことかもしれませんが、月経周期が順調な人は48%程度(*1)だということが、ある調査で明らかになっています。
これは、ピル服用中の人も含めての48%なので、現実には二人に一人もいないということになります。
ピルは、望まない妊娠を回避したい人だけでなく、将来の出産を考えて月経周期を安定させたいと考えている人にとっても有効なのです。

また低用量ピルを中止すると、速やかに排卵が開始され、計画的な妊娠を実現できるとも言われています。

このように女性が『ピルを飲む理由』は、実に様々である…ということをお分かりいただけたと思います。

(*1) マイナビウーマンが22~34歳の働く未婚女性を対象に実施した、2014年6月のWEBアンケート。有効回答数196件。https://woman.mynavi.jp/article/140809/

「女性ホルモンを処方してもらうなんて、
不自然だからやめたら?」

これは男性にかぎったことではなく、同性の女性から言われることもある言葉です。

卵巣機能が衰えはじめ、女性ホルモンの分泌が減少する「閉経を迎える前後の期間」、40代半ば頃が女性の『更年期』といわれていますが、 そんな更年期を迎えた女性が、これからも健やかで元気な人生を歩んでいくために、低下した女性ホルモンの『エストロゲン』を、 飲み薬、貼り薬、塗り薬等で補うのが、ホルモン補充療法です。

昔から、「更年期障害には納豆や豆腐を食べるといい」と、『女性ホルモンの不足は大豆製品で補える』と言われてきました。
今では、大豆イソフラボンは女性ホルモンの『エストロゲン』と似た働きをしてくれることが実証されていますので、 そこから「身体に必要なものはすべて食べ物から摂れるはず」「薬に頼らず、女性ホルモンなんて食べ物から摂ればいいじゃないか。その方が自然で身体にもいいはずだよ」 という言葉が出るのでしょう。母親など、年長の女性から言われることもありそうです。

たしかに、大豆製品が『エストロゲン』の代替をしてくれることは事実です。一日に40~50ミリグラムのイソフラボンを摂るのが理想で、実際に食品に置き換えると、

大豆

豆腐 約1/2丁(110グラム)
納豆 1パック(40グラム)
油揚げ 1/2枚(75グラム)
豆乳飲料 コップ半分ぐらい(100ミリリットル)

と、普通の食事で簡単に摂れる量です。

このほか、味噌やきな粉、煮豆などにも含まれていますから、外食の多い人でも一日一回を和食にすれば充分に摂れるはずです。
食事で摂った大豆イソフラボン(ダイゼイン)は腸の中である種の腸内細菌と結びつき、『エクオール』という物質に変わります。
この『エクオール』が『エストロゲン』と似た働きをしてくれるのです。実際この『エクオール』によってPMS(月経前症候群)も更年期障害も改善されることがわかっています。

ところが、です。
この腸内細菌は誰でもが持っているわけではありません。日本人の約50%、欧米人では約30%しか持っていないのです。
大豆を食べて女性ホルモンの不足を解消できる人は、実に二人に一人しかいないわけです。
また、10代~20代の若い人たちでは、これが三人に一人しかいない(*2)そうですから、PMS(月経前症候群)やPDD(広汎性発達障害)に悩む人や、 更年期で悩んでいる人には『女性ホルモンの処方』が必要なのです。

(*2) 体内でエクオールを作れるかどうかは尿検査で調べることができます。郵送キットも販売されています。
大豆イソフラボンをたくさん食べたほうが、エクオールを多く生成できるようになります。
若い人に腸内でエクオールを作れる人が少ないのは、大豆をたくさん食べる日本型食生活をしなくなったことが原因として指摘されています。

「どんなに疲れていても子供の寝顔を見たら忘れられるんでしょう?」

育児

これは以前テレビで、タレントの青木さやかさんが「男性から言われた」と言っていた言葉です。
シングルマザーとして子育てをしていた青木さんが、当惑したような表情で話していたのを記憶しています。

「夜遅くに仕事から帰り、疲労もストレスも溜まっていたけれど、すやすや眠っている子供の寝顔を目にしたら、心がスーッと軽くなる……」 という気持ちを毎日味わっているのは、もしかしたら男性だけかも知れません。

シングルマザーでなくとも、育児のディレクターは女性が受け持っていることがほとんどです。
寝顔に心癒される余裕の時間はなかったり、あってもほんの一瞬だったりで、「さあ、明日の保育園の持ち物と、仕事の支度と……」と子供が寝ている間にやっておきたいことは山積みなのです。

仕事を持つ女性にとっては、出産の疲れも癒えぬ間に2~3時間おきの授乳がはじまり、睡眠不足が重なったまま、産休明けを迎える人も少なくないと言われます。
出産前後の女性の身体の中では、ホルモンの嵐が起きているようなものです。
妊娠中は胎盤から多量のホルモンが分泌されているのに、出産した日からはこれが一気に減少します。
しかも、授乳中は母乳を出すために卵巣機能が抑制されており、生理の再開を遅くしているのです。
このように、短期間で目まぐるしい体内変化が起こっているときに、慣れない育児や保育園の送り迎え、産休明けの出勤の気苦労などが同時にのしかかってきます。

『マタニティブルー』という言葉はよく知られているので、「妻が精神的に大変なのは出産までで、その後は元気になるはず」という誤解をされがちですが、 『マタニティブルー』とは、妊娠中のみならず、出産後にもあらわれる感情の変化のことを言います。

産後1週間ぐらいのあいだに見られる『抑うつ状態』はほとんどの人が体験する短期的のもので自然に回復しますが、産後2~3週間でかかる人が多い『産後うつ』は、 出産後思っていたような育児ができない、赤ちゃんが泣き止まないなどの精神的ストレスから発症します。
出産や子育てに対して不安を感じたり、夫や周りの人にイライラしがちになったり、涙もろくなり特に理由もないのに泣いてしまう…などの症状から、 外出したくなくなる、何に対しても興味が持てなくなる、自分自身を責めてしまうなどの症状まで様々です。
すべて育児の疲れや孤立感、家事・育児・仕事が完璧にできていない罪悪感などが原因で起こります。
産後3~4ヵ月後に症状が出る人もいるので、それまでは注意が必要です。

『産後うつ』の「何もかもが中途半端で、両立できていない……」と悩む妻(*3)に対して、「どうやったら完璧にできるか、方法を考えよう」「君は能力の高い人だから、できるはずだよ」 とますます問題に向き合わせることは、じわじわと首を絞めるようなことになりかねません。
自信を失い、判断能力が低下し、感情表現が乏しくなる―などの症状が見られたら、病院に行くことを勧めましょう。

一方で、男性側から育児や家事を率先して分担して行ったり、地域・公共のサポートを利用したり、時には有料のサービスに頼むなど、女性を休ませてあげる時間を作ってあげることが重要です。

「一人で抱えこまなくていい、周りに頼ってもいいんだ」と感じられるように、ぜひ働きかけてください。

出産によって女性は、ちょっとした手術を受けたのと同じくらいのダメージを負っています。
脳は出産前、妊娠前の身体に戻そうとして、ホルモンのバランスを大きく変更してきます。
出産直後の女性は、そんな見えない嵐に耐えている、ということを周囲の男性には理解してほしいと思います。
女性はみな、出産で負った傷を必死に回復させながら子育てし、「子供さえいれば幸せ」と思える余裕もなく、肉体的にも精神的にも極限状態です。身近な人の理解と協力が、なくてはならないのです。

(*3) 実際、2010年に産後うつのアナウンサーが自殺する痛ましい事件が起きました。
夫は海外にいて不在で、肉親の証言によると実際には家事も育児もしているのに、「できていない」と自らを追いつめるような言動があったようです。

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『男性にありがちな誤解と思いこみ』―なんて、何だか上から目線のタイトルですみません。
女性と男性の身体の構造は大きく違うので、まったく理解できないのが当たり前なんですよね。
女性も男性の身体がわかっているかと言うと、そんなことはありません。
男性のペニスが海綿体でできていて、それが充血するとあんなに硬くなるんだということは、女性は自分の身体で実感することができません。
異性間には『誤解』も『思いこみ』もあって当然です。

女性にとって望ましいパートナーとは、女性の身体について何でも知っている男性、ではないのです。
女性ならではの苦しみや痛みを打ち明けたとき、「ああすべき、こうすべき」とアドバイスする人でもなく、「そうだったんだ、そんなふうに感じていたんだ」と穏やかに受けとめ、 寄り添ってくれる人なのではないでしょうか。
そのような男性が、家庭にも職場にもいることが、女性にとって幸せな環境なのは間違いありません。